子育て家族へ何を提供しようか考えたものを、アウトプットする場が『アカチャンホンポ』であってほしいと思っています

株式会社赤ちゃん本舗 代表取締役社長
味志 謙司

今回のリレーションシップは、株式会社赤ちゃん本舗 代表取締役社長 味志謙司さんです。現役助産師の知識や知見を活かし、妊娠・出産・子育てに役立つコンテンツを提供するDOUBLE SLASHリリースから1年が経ち、今まで一緒にさまざまな取り組みを行ってきました。今回は改めて私たちの出会いや印象をお話し、これからのビジョンも共有しました。今回のインタビュアーは岸畑です。

現在のリ・ブランディングの方向性のスイッチが切り替わったのは、失敗を認めたことが大きかった

岸畑:今回、ブランディングブックを持ってきてくださいました。私たちの出会いは 2021年ですが、今までのブランディングはどうような感じだったのですか?

味志さん:2014年のリ・ブランディング第1ステージの時は、それまで使い続けていた創業者の企業理念やロゴマークを一新しました。これを社員に周知するべく、詳しい中身と実現に向けた具体策を記した「ブランディングノート」を作成しました。
しかし、この第1ステージは大失敗でした。ブランディングノートには少し先の未来についてこうなりたい、と書いてあるんですが、2014年〜2019年までそれに向かって全然動けなかった。
リ・ブランディングを始めて、翌年2015年は売り上げが初めて1000億円の大台を突破するものの、そこから5年間、結果としてはほとんど同じ数字で、停滞してしまいました。どうにか成長しようと思うが、何を売ろう、来月何をやっていこう、と近視眼的に日々のことに追われてしまっていました。目指す未来は書いてあるのに、それに向かった仕事は置き去りになって、結局ほとんど進みませんでした。

岸畑:そうだったのですね…。長期的なスパンでやることってなかなか手をつけられにくく、短期的なタスクのほうが手がつけられやすいこと、分かります。

味志さん:もう1回アカチャンホンポとは、どういう仕事をするべきか定義をし直して、それに向かってみんなでやろうとしたんですけど、期限が来てしまった。先のブランディングノートは期限を想定して作成したもので、2020年に「ブランディングブック」としてつくり替えました。

岸畑:第1回目のリ・ブランディングをうまくいかなかったという評価で振り返るのは勇気が必要だったのではないですか。

味志さん:第1ステージと現在のリ・ブランディングとの方向性のスイッチが切り替わったのは、失敗を認めたことが大きかったと思います。ネガティブを振り返るのは勇気がいりますが、中途半端にしたらその後もうまくいかない。
第1ステージは企業理念を具体的に仕事に取り入れることができなかった。第2ステージでは全パートナーが体現できるように、「赤ちゃん本舗の強み」ってなんだろうと定義し直しました。それが「赤ちゃんのいる暮らしを知りつくしていること」です。With Midwifeとつながったときに、このメッセージと合致すると感じたので、今の取り組みがはじまったと感じています。

岸畑:なるほど。このメッセージを初めてみたときに、温度がのっていると感じました。ブランディングブックには、このメッセージの前のページに「私たちは赤ちゃんのいる生活を知りつくしているといえない」と書いてあります。「いえない」って書いてあるのに、「知りつくしている」と定義している。
私たちも助産師という価値を最大化させて広げていこうと考えているけど、反対の目線では、助産師って本当にその価値があるのか、私たちがそれをできているのか、クリティカルにみています。今あるものをみとめて最大化させていく視点は別視点で持っていて、2つの視点があるからこそ、よりメッセージに強さを感じています。

味志さん:失敗してもそれをちゃんと認めているから、メッセージがより強くなるし、これをずっとやっていこう、と信念の強化につながっていると思います。

岸畑:そんな信念があったからこそ、With Midwifeという会社を知った時に興味を持ってくれたのかもしれませんね。

With Midwifeが民間企業として経営しているのが私にとってひとつの判断材料になった

岸畑:具体的にどうやって私たちを知っていただけたのですか?

味志さん:2021年2月の日経新聞に「顧問助産師」の記事に当時の経営企画メンバーが興味を持ったことがきっかけです。赤ちゃんのいる暮らしを知りつくすため、助産師のような人とつながって専門的な知識を得ることが、将来どこかで必要なんじゃないかと、私も同じように考えていました。
助産師を集団化してビジネスにしているWith Midwifeの記事をみて、当社スタッフがすぐにアポイントの連絡をしたと聞いています。
翌3月には初回のMTGが実現し、2回目のMTGで私も乱入しました(笑)

岸畑:2回目でいきなり味志さんがでてきて、すごく緊張したのを覚えています(笑)でもいきなりすごく、深い話をしましたよね。

味志さん:深い話をしましたね。それこそ社長に就任して20日くらいでお会いしていると思うんですが、社長になったからこそブランディングに対して、より動いていくことが私の信念です。コロナの影響も出始めてて、どうなるかわからない、そんな中で赤ちゃん本舗が提供していく価値ってどう変化していくのだろう、と考えていた時に、助産師さんと何か一緒にできることがあるんじゃないか、という風に思いましたね。

岸畑:なぜさまざまある団体、機関の中でWith Midwifeと一緒に取り組みを始めようと思ったんですか?

味志さん:もともとお付き合いのある助産師さんの団体もあります。ただ医学的なサポートをしてもらう、教えてもらうということはできるのですが、企業の中に入ってもらい何かを生み出せるかというと、そういう関係性には至りませんでした。
With Midwifeと出会って、やっぱり助産師さんというスキルはもっと世の中に返していかないともったいないよね、という考え方は非常に共感しました。赤ちゃん本舗には店舗があるので、地域の人が集まってきます。物を通じての価値提供はできているけれど、もっと専門的なであるなど、我々だけでは困っていることを解決しきれないと思っています。
私が社長になる前は、赤ちゃん本舗の中だけでお客様とつながっていました。しかしそれだけでは、企業理念に書いている「子育て総合支援企業」にはなれない。
我々では提供できない価値は、外の企業や人と組んでつくることも必要なんだと、その門戸を開いたことは、私が社長になってから、いち早く取り組んだことです。With Midwifeと出会ったのはちょうどそのタイミングでした。
タイミングも良かったし、企業同士のビジネスをやっていこうとする関係性になれそうだったのもよかったんだと思います。あの時、どうしてボランティアではなく、株式会社としてやっているのか聞きましたよね。With Midwifeが民間企業として経営しているのが私にとってひとつの判断材料になりました。企業として対ビジネスでやっていけないと先が続かないだろうなと思っています。

専門性やマニアックさにこだわった子育て応援動画は4万回再生を超える

岸畑:出会うタイミングが半年前や、半年後であればこのような関係性になっていなかったのかもしれませんね。今With Midwifeとはどのような取り組みをされているのですか?

味志さん:まず、動画コンテンツを制作し、HP上で公開しています。出産、子育てに本当に間違いなく役に立つものにするために、専門性やマニアックさはこだわりたいと思いました。

岸畑:1年前の対談では、まだ動画が世に出る前だったので、こんなにマニアックでいいのかな、と話したことを覚えています。けどあれから1年が経って、分娩の流れに関する3分の動画コンテンツが4万回も再生されていますね。

味志さん:本当は知りたいけど知る機会がないのが、特に分娩の流れだったのかなと思います。現在の出生数は年間約80万人となっていて、1年弱で4万回みてもらえているのは、すごい確率だなと思いますね。知らなかった、知りたかったが再生回数につながっているのだと思います。

岸畑:動画コンテンツはマタニティアドバイザーさんの研修にも使っていただいていると聞いています。また年に一回は専門的な研修も行わせていただいています。「赤ちゃんのいる生活を知りつくす」ということを一番お客様の近くで実践しているのはマタニティアドバイザーだと思います。大きな看板を背負うのことの不安感もあると思っていて、研修を通して、安心してお客様と対話できる環境をつくれたら嬉しいですね。

味志さん:助産師さんから直接話を聞く機会はそうそうないと思います。それを会社の仕組みでできるのはマタ二ティアドバイザーの自信にもつながると思います。

岸畑:後は子育ての悩みに答えるTwitterの運営もさせていただいています。最近は中で対応している助産師さんも紹介しはじめました。このように、赤ちゃん本舗さんを通じてユーザーと助産師が直接やりとりしているのはどう感じますか?

味志さん:動画コンテンツはHPに観にくる、という関係性だが、Twitterではインタラクティブに、悩みに対して助産師さんが答えてくれます。それはとても価値のあるサービスだと思います。

岸畑:直接やりとりをすることで、目に見えて、「悩みが解決した」というお声もいただけるようになってきていて、そこはすごく有難いですね。
これからTwitterも中の人を可視化したり、マタニティアドバイザーが紹介カードを配ったりと、より認知が進んでいくと思います。

助産師の専門性は、今まで病院の中だったり、関わった妊婦さんとの関係性でしか伝わらなかった。

岸畑:1年一緒に取り組みを行ってみて、私たちに対して印象が変わった点や気づいた点などありますか?

味志さん:改めてすごい専門的だなと感じました。その専門性は、今まで病院の中だったり、関わった妊婦さんとの関係性でしか伝わらなかった。赤ちゃん本舗と組んだからこそ、社会に対してその知識や知見を提供することができ、今後はよりその価値を見出して、できることがあるんだろうなと思います。

岸畑:「赤ちゃんのいる暮らしを知りつくしていること」が強みの赤ちゃん本舗さんへ、専門性の部分を発揮できていることがすごく嬉しいです。けどきっとそれは医療知識だけではないと思います。その人の置かれている状況を考え、生活に根ざした正しい情報を伝えられるのは、赤ちゃんのいる暮らしに寄り添うためにも、すごく大切なのでは感じます。

味志さん:普段の赤ちゃんとの暮らしの中で、医療的に困る瞬間もあると思うけれど、それ以外の困り事の方がたくさんある。それに対して、助産師のアドバイスが少し入ってくるだけで、安心できると思います。

岸畑:医療知識の提供だけではサポートは途切れてしまいます。ベビーカーは何がいいのか、今日の天気は散歩に行っていいのかのような日常の疑問に答えていくことが、継続支援につながると思います。これは赤ちゃん本舗さんと一緒にお仕事することで気付かせていただきました。

味志さん:お散歩行っていいかな、という何気ない心配や疑問は医療的な問題ではない。けどそれを助産師さんに「行っていいよ」っていってもらえることで安心することができる。アカチャンホンポでも、「お散歩行くならこのグッズいいよ」って伝えられる。そんな日常の一場面をつくれることが、赤ちゃん本舗、With Midwifeが一緒に取り組む価値なんだと思います。

岸畑:そうですね。私もそう思います。味志さん、今後With Midwifeとやっていきたいことはありますか?

味志さん:今はアカチャンホンポとWith Midwifeの1対1の関係性で事業を行っています。しかし、助産師さんを社会に戻すためには1対1の関係ではなく、違う人々と三者連携をしていかなければいけないと思っています。それは行政かもしれないし、民間企業かもしれません。今後そのような方々とWith Midwifeが、妊産婦や子育て家族に向けて何か提供しようと考えたとき、アウトプットする場が『アカチャンホンポ』であって欲しいなと思っています。赤ちゃん本舗の優れている点は妊娠出産子育てしている人とのフィールドがありコミュニティがあることだと思います。その人たちに助産師さんを通じて価値を提供できればといいなと思います。

岸畑:「子育て総合支援企業」として、知識やテクノロジーなど、いろいろなものを掛け合わせていく。赤ちゃん本舗さんが子育ての唯一の総合支援企業になれるよう、今後も一緒にさまざまな取り組みを行っていけると嬉しいです。

株式会社赤ちゃん本舗との事業

DOUBLE SLASH

赤ちゃん本舗とWith Midwifeがその強みを生かし、妊産婦さんや子育て家族に向けたサポートを提供するプロジェクトです。子育て応援動画や、Twitterでのコミュニケーションなど、日常で使えるコンテンツが揃っています。

  1. ホーム
  2. リレーションシップ
  3. 子育て家族へ何を提供しようか考えたものを、アウトプットする場が『アカチャンホンポ』であってほしいと思っています